休日、俺はあいつと二人で……

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俺の言葉に、楓はすぐに笑顔になる。笑ってばっかの明るい奴だな。 「よぉ~し、次はサッカーやろうか? サッカー!」 「お! サッカーなら自信あるぞ。行こうぜ」 「うんっ!」 こうして、俺は楓とスポーツばかりやり、一日が過ぎていった。 「ちょっと……疲れたな……」 全てのスポーツ勝負が終わり、スポーツセンターを出た頃は夕方だった。 俺は西に傾く夕陽を見ながら、自分の腕を優しく撫でていた。 今日は激しく動きすぎたな。最近、全然、運動してなかったし……、明日は筋肉痛になるかもしれない。 結局、あの後、サッカー、バスケ、テニス、卓球、ダーツ。とまぁ、ほとんどのスポーツを勝負したが、俺が勝ったのはサッカーだけだった。 「これであたしは冬真君に6回、勝ったから、6回分冬真君に言うこと聞かせることが出来る!」 「え!? あれ総合的で勝ったらの話じゃねぇの!? しかも、一つのスポーツごとに、一回分!?」 「そだよー? そう言う意味で教えたんだよ?」 だったら、もう少し分かりやすく言ってくれ。 「さて、じゃあ、何をお願いしよっかなぁ~?」 ニヤニヤと笑いながら、嫌らしい目付きで俺を見る。 だが、俺にだってこいつに、何でもお願い出来る権利を何とか手に入れている。6回分、辱しめを受けるお願いをされても、更にその上へ行くお願いをすればいいんだ! ……一回分だけだけど。 「じゃあ、まず1個目。朝、学校であたしに会ったら挨拶すること! いいね?」 ……あれ? 「……あ、ああ」 意外とノーマルなお願いが来たな。 「2つめ。週の始めと終わりには、あたしに弁当を作ってくること」 1個目に続き、簡単なお願いだ。俺は頷いた。 「3つめ。あたしが遊びに誘ったら、出来るだけ一緒に遊ぶこと。……あ、これ強制じゃないからね? 断りたい時は、断っていいから」 ……それはお願いというのだろうか? 「ああ」 俺はまた頷く。 「4つめ。あたしが勉強教えるって言ったら、必ず教えてもらうこと」 それは……お願い……なのか……? 俺は頷く。 「5つめ」 そこで初めて一旦、区切り、楓は息を吸って口を開いた。 「どんなあたしを知っても……裏切らないで欲しい。側に……いて欲しい……」 この時の楓の声は、今までのお願いを言ってた声と違っていた。 懇願するような……そんな声だった。
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