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「……」
何故、楓は俺にこんなことを願うのだろう? 不良とか皆からはそう呼ばれているが、実はなかなか可愛い子だ。こいつが周りに呼び掛ければ、すぐに友達も出来るだろう。そして、その友達に、俺に言ったことを言えばいい。しかし、楓はそう言ったことをせず、俺に、俺だけにそう願ってくる。
それを、俺は何故だと思っていた。
こないだ顔見知りになったばっかだぞ? お互いのことをまだよく知らない仲だぞ? 何でだ……?
「……駄目……かな……?」
上目遣いに、楓は俺にそう聞いてきた。
そんな楓を見て、俺は考えていたことをバカバカしいと、頭から消した。
こいつとは、立場上、ご主人様と下僕になっているが、それ以前に友達だ。聞いてやろうじゃないか、こいつの願いを。
「……いいぞ」
「え……?」
俺の言葉に、楓は俺の顔を見た。
その顔を見て、俺は続けた。
「俺はこの通り、普通の人間じゃない。だから、あんたにどんな秘密があろうと、俺には関係ない。知ったって、裏切らないし、離れたりもしない」
「……あたしのお願い……聞いてくれるの?」
その問いに、俺は笑った。
「おかしなことを言うなぁ、あんたは。あんたは、何でも俺に言うことを聞かせることが出来るんだぜ?」
そのことに、楓は「そうだけど……」と、釈然としない様子。そんな楓に、俺は最後の、強力な言葉を放った。
「俺とあんたは……友達なんだろ?」
「ソウダヨ。ボクガトモダチダヨ」
「……帰るわ」
「わぁーっ! 冗談! 冗談だってばぁ~!」
本気で帰ろうとした俺の腕を掴んだ。
「……信じていい? 君が言ったこと」
そして、赤くなりながら俯き、楓は俺に聞いてくる。
「友達は信じられないか?」
と、俺は少し意地悪っぽく聞いてみた。すると、楓は凄い早さで首を横に振った。
「信じる。信じるよ、冬真君」
「ん。それでいい。……で? 最後の願いは?」
今まで聞いたのは5つ。まだ、1つ残っている。
聞くと、楓は意味深な笑みを浮かべた。
「取っとく」
「……そうかい。なら、俺も取っとくとしよう」
メイド服でも着せて、楽しませてもらうか、と思っていたが、それはなしにさせてもらおう。
「? 使えばいいじゃん」
「なら、メイド服着て、俺に給仕しろ」
「おっけぇ」
「ちょっ……! 冗談だって!」
素直に従おうとした楓を俺は止めた。
何でも願いを聞かせることが出来る権利だぜ? ここで使うのは勿体無ぇよ。
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