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私には、好きな人がいた。
その人は、面倒くさり屋で、成績は毎回、長期休暇に補習になるほど悪いけど、優しくて、面倒見が良い素敵な男性だった。
そんな彼を見た時から、私は自然と彼を目で追うようになり、これが恋だと気付くのに時間は掛からなかった。
……この想いを伝えたい。でも、そんな勇気は私にはない。
でも、いつも見てるだけじゃ満足出来ない。私は見てるだけで満足出来る女の子じゃない。でも、告白する勇気はない。
どうしよ? と、考える今日この頃だった。
4月28日。
俺の通う学校は、明日からゴールデンウィーク。その前日である、今日の帰りのHRが終わり、帰ろうとした時、
「お~い、橘~。お前、明日追試な~」
という担任、にっしーの無情な言葉が俺の耳に届いた。
俺は持ってた鞄を机に置き、うんざりしたような顔でにっしーを見た。
「……何でだよ?」
「これを見ても、同じことが聞けるか?」
そう言って、にっしーは俺に近付き、束にした紙を俺に渡してきた。
それを見て、俺は納得してしまった。
その紙は、これまで行われていた小テストの類いだ。50点からが合格点だが、俺の場合、全てが50点以下だった。
「……そういうこと」
「お前、成績悪いだろー? 明日の追試で50点以上、取れなかったら、ゴールデンウィーク、全て補習な」
「ふざけんなっ!」
「それはこっちのセリフだっ! お前が明日の追試で50点以上、取らなかったら、オレまでお前に付き合うことになるんだぞ!? 妻と娘の三人で旅行行けなくなるだろうがっ!」
「だったら、インチキして俺のテスト、全て50点以上にしろよ!」
「そんなことをしたら、教師の威厳がなくなるわっ!」
言い終わった頃、ゼーハーゼーハーとお互い、息遣いが荒くなっていた。
「と、ともかくだ……。明日の追試、合格してくれ……。というかしろ。いいな?」
そう最後に俺に言い、にっしーは教室を出ていった。
「……勉強、教えてやるくらい言えんのか、あの教師は……」
そう呟きながら、俺は鞄を持って、「さすがにゴールデンウィーク全てが補習なのは嫌だなぁ」と思い、勉強しようと図書室に向かった。
図書室
扉を開けると、
「お、橘ちゃん!」
すぐ近くから、俺の名前を呼ぶ声がした。
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