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その方向を向くと、そこは本の貸し出しを行う受け付け台があり、そこにピンク色のポニーテールの髪型をしたの少女がいた。
「おう。今日はお前が当番だったのか」
そう言うと、少女は頷いた。
彼女の名前は桔梗風雅(ききょうふうか)。俺と同じ2年で、図書委員。本がよほど好きなのか、去年も図書委員をやっている。クラスは違うが、俺と同じ皆には内緒にしている“秘密”があり、それをお互い知った俺たちは親友となっていた。
「しかし、珍しいね。橘ちゃんが図書室に来るなんてさ」
「そんなに珍しいか?」
「珍しい珍しい。だって、橘ちゃん、一年に図書室に来た回数、3回だもん」
まぁ、そこまで俺、愛読家じゃないしな。
桔梗はあまりの珍しさに、ずいっと身を乗り出して聞いてきた。
「今日はどのようなご用件で?」
「勉強だよ」
「……勉強? 橘ちゃんが?」
意外そうに、桔梗は首を傾げた。
「ついに頭がおかしくなった?」
「……どういう意味だ、コラ」
「だって、橘ちゃんが勉強するなんて、有り得ないも~ん」
偏見だろ。だが、桔梗の言葉は本当なので、俺は何も言えない。
俺ははぁ、と息を吐き、持ってた鞄から小テストの束を出し、桔梗に渡す。
「うわ……、これはひどい……」
「俺の目の前で言うな……。やる気がなくなる……」
そう言い、俺は桔梗から小テストの束を返してもらう。
それを鞄に入れると、桔梗はう~んと何かを考え始めた。
「でも、その結果って、結局、自業自得なんだよね。橘ちゃん、勉強しないし」
「ぐっ……!」
桔梗の言葉が、俺の胸にグッサリと刺さる。
「だからさ」
そんな俺の反応を見て、桔梗は楽しむように微笑みながら、俺にこう言ってきた。
「この私、桔梗風雅が橘ちゃんに勉強を教えてしんぜよう!」
「……は?」
桔梗の言葉を一瞬、理解出来ず、俺は首を傾げていた。
「だから、勉強教えてあげるよ! 私の成績、知ってるでしょ?」
桔梗の問いに、俺は頷いた。
こいつの成績は常に学年6位。楓には劣るが、かなり勉強が出来る奴だ。
「教えてくれるのか?」
だとしたらありがたい。こいつに教えてもらえれば、明日の追試、合格出来るかもしれん。
「ただし、条件が一個だけある!」
条件……だと?
それは何だ?
「それは何だ?」
聞いてみた。
桔梗は口を開く。
「今度の休み、一緒に遊ぼうよ。大智も誘ってさ」
「……なんだ、そんなこと……」
もっとヤバい条件だと思った。
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