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そこにいたのは、赤毛のショートヘアーの女子生徒だった。俺はこの女子生徒を知っている。
彼女は2年1組に所属するクラスメートの高品楓。素行不良で、2年1組のクラスメートは全員、彼女を不良だと言っているが、ほかの不良とつるんでるとか、夜遅くに出歩くとか、警察に補導されたとか、そういった話は聞かない。
教師側も、何とか彼女を更生させようと考えているらしいが、彼女がいつも学年5位を保っているため、何も言えないそうだ。
そんな不良なのか優等生なのか、よく分からない高品を見ながら、俺は聞いた。
「……下僕って……何すればいいんだ?」
「あら、意外と抵抗しないのね」
そんな高品の言葉に、俺は肩を竦めた。
「俺だって、抵抗したいさ。でも、あんたは証拠を持ってる。それをバラされたくないから、俺は抵抗しないんだよ」
こいつに俺の秘密を皆にバラされて、今まで培ってきた友情とかを崩したくないしな。
そう言うと、高品は満足そうに笑った。
「利口ね。聞き分けのいい人は、好きだよ」
そう言うと、高品はデジカメをしまい、すっ、と俺に右手を出してきた。
「? 何だ、この右手……」
俺が聞くと、高品はにこにこと笑い、答えた。
「握手」
「握手?」
何で握手なんか……? そう思った俺の心の中を読んだのか、高品は口を開いた。
「これから、下僕兼友達になる訳だから、仲良くしようということで、握手!」
「友達? 下僕じゃないのか?」
首を傾げると、高品はきょとんとした。
「下僕でもあるよ? でも、それ以前に、友達。あたしたちは今日から友達!」
「いや、秘密を知られたからって、しかも俺のだけ。それだけで、友達になるもんなのか?」
俺の秘密を知って、友達になろうとは……。どうせなら、あっちも秘密を教えてもらいたいものだが……、
「ぐだぐだ言わないの。……バラすよ?」
「わ、分かったよ!」
俺はこいつに秘密を知られた。こいつにあーだこーだ言える立場ではないようだ。
高品の脅しの言葉に、俺は反射的に握手をした。
「よろしくね! 冬真君!」
満面な笑みで、嬉しそうにそう高品。
結構、笑うとこいつ可愛いな。ま、秘密を知られ、バラされないために、俺は下僕になった訳だが……、可愛いからいいか。
そう思ったが、俺は後々、そのことを後悔することとなるのだが……、この時の俺は、何も知らなかった。
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