○●○眠り祭り2010○●○ 投稿作 読者賞6位 作者賞6位

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 「どうだい、夢の中は?」 開口一番に夢倉はそう陽気な声で言った。 「よく僕の番号がわかったね。夢倉も夢の中にいるの?」 「そりゃそうさ、僕が夢の中に招待したんだからね。僕が持っている場にクラスのみんなも来ているよ。周一も来るといい。いまどの辺にいるんだい?」 「すごく長い石造りの階段を登っている途中なんだけど、詳しいところまでは解らないな」 「いや、そこなら解るから迎えを出そう。ちょっと待っててくれ」 そう言って通話が切れたので周一は待つしかなかったのだが、ため息を一つついた頃には巨大な招き猫の置物が空から周一の前に降りてきた。小判の所には電光表示で夢倉亭行きと標示されている。招き猫の側面に付けられた扉が開いたので周一が中に入ると座席が一つだけ有り、周りは訳の分からないボタンとモニターで覆い尽くされていた。モニターに「ご着席してください」の文字が現れたので周一が座ると非常ランプが点灯した。 「本艦はこれより離陸します。これより離陸します。これより離陸します。大事な事なので三回言いました」 周一を乗せた招き猫はもの凄い勢いで離陸した。 衝撃に目がくらんだ周一が一瞬、モニターに映った外の様子を見たときには蒼い地球の姿が見えた。衝撃が緩んできたのでGに押さえつけられていた頭を上げモニターを見ると銀河系の全体図が見えた。思えば遠くにきたものだと思った頃には宇宙の果てにいたのだった。
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