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『キミ、目…ダイジョブ?』
ふと、電気のスイッチがある反対側の壁を見ると、その床に割れた試験管が散乱していた。
たぶん、ココの位置から"彼"は正確に試験管を投げて、灯りをつけたのだろう。
あれから、僕は彼を見て失礼にも驚いて倒れかけたらしい。
そこで、彼が受け止めてくれたらしいのだが…
まだ驚きは収まらない。
パっと見【人形】みたいだ。
髪は真っ白。
肌は不健康に白いし、瞳なんか浅瀬の海の澄んだような色が光に反射して、まるでガラス玉みたいだ。
声だけ聞いたときは変態だと思った。
光がついた瞬間に、逃げようかとも思ったし、実際にもできただろう。
でも
視界のはしに見えた彼の目が余りにも綺麗で…僕はそのまま身を任せてしまったようだ。
本当に…変な噂話なんか気にしているからこうなるんだ…。
ばかみたい…。僕ばかみたい…。
『キミ、名前は?』
“彼”が尋ねた。
「柘榴(ざくろ)。果物でさ、あるでしょ?ざくろ。その漢字で柘榴っていうんだ。」
『ザークロくん!!柘榴かァ~かわってるんだねェ』
「まぁ……でもいい。意外に気に入ってるから。」
嘘だった。
…意外にも、人見知りの僕が、この怪しい"彼"とはスラスラと話すことが出来た。
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