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「………耳…!?」
『耳だヨ~?』
は…!?
だ、駄目だ。コイツ危ない…!!
―――――逃げろッ!!!
本能が叫んだ。
じり、なるべく音を立てぬようゆっくりと後ずさる。
暗闇の中で唯一僕を支えているのが冷たい壁だけということが酷く頼りなく思える。
『エー?逃げたいってカオしてるヨォ~?やだやだぁ久しぶりのヒトなんだカラさぁ……お話しようヨゥ?』
「ぼ、僕はひとりになりに此処に来ただけだ。お前がいるなら、帰る。」
『やっだなァ、つれないこと言わないデ………サァッッ!!!!』
男は手を大きく降り上げ近くにあった何かをぶん投げた。
…多分。
カチリ、と小さく音がした。
その直後パリーン…、とガラスが割れて落ちるような音がした。
刹那、闇に目が慣れてきた頃だったので世界がチカチカと瞬く。
視界の真ん中に真っ白の物体が映った。
「いっ、眩しッ…!!!」
視界が赤や黄やと移り行き、眼球の奥の方がじんじんと痛む。
少し、時が経って
そして段々と鮮明になっていく世界。
見えたモノは白髪が腰まで届くような綺麗な顔のした男と、よくあるような理科講義室、そのものの姿だった。
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