1人が本棚に入れています
本棚に追加
「これも駄目だな…。」
「ふざけるなっ!!!」
「ん………?」
降りようとしたホームからいきなり怒号が聞こえた。
少年が訝しげにホームを見渡すと、改札の辺りでおやじが若い男の胸倉を掴んでいるという光景を捉えた。
おやじは、高級そうなスーツを着て高級そうな革靴に鞄に時計に………どこかの企業の成金かなにかだろう。
一方若い男は、シンプルなスーツを綺麗に着こなし、フレームの眼鏡がよく似合う…いかにも紳士というような印象を感じた。
「よくも!よくも俺をハメてくれたな!!」
「さて…何のことでしょう?」
成金男は唾が飛びそうな勢いでまくし立てるが、眼鏡紳士は涼しい顔で笑みを崩さない。
「とぼけんな!しらを切る気か!?お前のせいで俺の人生は台無しだっ!!」
「そのように言われても…言い掛かりは困りますね。それにあなたの人生なんて、大したものでもないでしょう?」
「…っ!?この野郎!!!」
「………ふん。」
成金男はいきなり眼鏡紳士に殴りかかったが、あっさりと攻撃をかわされ、逆に地面に俯せる羽目にあった。
「…これは自己防衛です。先に攻撃してきたのはあなたですから。それと…。」
眼鏡紳士はしゃがんで成金男に耳打ちした。
少年はその場から離れていたにも関わらず、紳士の言葉は少年の耳にしっかりと届いた。
「………騙されたあなたが悪いんですよ、犯罪者さん。」
「………!?」
眼鏡紳士が立ち上がった時、一瞬少年と目が合った。
紳士は…無表情とも言えるような冷徹な微笑を浮かべていた。
成金をそのままに、紳士はさっさと改札を抜けて行く。
少年の足は、自然と男の後を追い始めた。
To be contine…
最初のコメントを投稿しよう!