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かつては傀儡でしかなかった皇帝も、時代を経た今では立派に国を運営できるだけの人材が生まれるようになった。
そんな現在の帝国では、水面下で二つの派閥が静かに蠢いていた。
一つはリサラを筆頭とする旧ヴァルク派。
リサラは名前を貸しているだけの立場であるが、この派閥は皇帝の意向よりもリサラの意向を優先するという、不敬罪を受けることも覚悟をした派閥である。
旧ヴァルク派は発言力の強い人物が所属している派閥であり、年齢層は比較的高め。
言ってしまえば古い仕来りを重要視する昔ながらの考えの派閥ということである。
彼らはリサラの言葉こそ絶対と考えており、皇帝といえどその発言を無碍に扱う事は許されない、という思想を持っているのだ。
皇帝からすれば不敬な事この上ないのだが、彼らは一人一人が国に欠かせない人材ばかりである。
更に言うなれば、彼ら全員の発言力を統合すると現皇帝を皇帝の座から引き下ろす事も可能であるのだ。
しかし、有能な皇帝という立場に加え、民の心の拠り所としている宗教・唯一神ゼウロスを主神とするゼウロス教の大司教が皇帝側の派閥・新ヴァルク派に組している事で互いの勢力関係は拮抗状態となっているのだ。
旧ヴァルクにとっても唯一神ゼウロスを信仰する立場故に、大司教の言葉は重い。
それにも関わらず旧ヴァルク派がリサラを支持するのは、偏に彼女の存在が稀有な物であるからだ。
不老不死の体現者であり、現大陸で確認されている英雄よりも高位の存在。
唯一神ゼウロスが使徒神の一柱“フェリアス”より神の力を与えられた、人にとっての至高存在。
神格者と呼ばれる、神の力その物を扱う事の許された、人智を超えた存在がリサラという魔女のもう一つの力であった。
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