[異世界です、お兄様]

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―――過去、神代の時代というものがあった。 これはアリーナのいた世界の時代だが、そこには幻想種と呼ばれる強大な力を持つ獣が跋扈していた。唯の一柱だけで世界を焼き払うだけの力を持つものばかりで、天馬や龍といった御伽噺に出てくる生き物が実在していたのだ。 その神代の聖獣をも抹殺する神の雷〈ラグナロク〉。チヒロの世界の言葉で翻訳すると、北欧神話における最終戦争を指す大技。 神代の時代を終焉に導いた、まさに神の雷である。 が、それも【理】に縛られるものたちに限ること。 同じ【理】でも、【理念】の前ではその大きさに塗りつぶされるが、【理念】を持つものならば・・・ 「ふむ・・・こうやるのか。なかなか面白い」 神代の聖獣を屠る一撃でさえ、容易く受け止めることができる。 今の、チヒロのように。 「チヒロさん、それは一体何なのですか?」 試験に合格したチヒロを嬉しそうな目で見るアリーナ。 今のチヒロは右手に掲げた何かで上空から降り注いだ〈ラグナロク〉の爆心地に無傷で立っていた。 彼の周りには金色の粒子が舞い、彼自身がひどく遠い存在に見えるようだった。 そんなチヒロはアリーナの質問に若干躊躇いつつも答えた 「これは・・・聖剣エクスカリバー、の鞘だ」 黄金に輝く一つの鞘。否、それは鞘というには大きすぎるものだった。 まるで盾に隙間を作り鞘と呼んでいるだけに見えるそれは、黄金の輝きに深い藍色の模様が描かれ、模様を良く見ると獅子の顔にも見える威圧感があり、また芸術品としての美しさも兼ね備えたものだった。
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