[異世界です、お兄様]

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アリーナは数分後、今言ったことを一生後悔することとなる。 化け物染みた【理念】の顕現度、そしてハイテンションのチヒロにこの言葉は火にガソリンを撒く行為だった。 「オーケィ。いっちょ派手に行きますかぁ!!」 そういうとおもむろにチヒロは〈アヴァロン〉を左手に持つと、右手を虚空に掲げる。 そして、高らかな声でもう一つの片割れの名を呼ぶ。 「【理念】の名の下に〈エクスカリバー〉よ!星の輝きを纏い、顕現せよ!!」 その声を放った瞬間、荘厳な造りの西洋剣が一振り現れた。 その撒き散らす〈フォトン〉の量たるや、先ほどの〈ラグナロク〉の3倍は放出されているだろう。 一瞬で竦み上がるアリーナ。 彼女の中の警鐘が最大限の危険を鳴らしている。 これは、ヤバイ!! 「で、ででででは、あああああ、後はがが、がんばって」 「エクス、カリバァァァァァァァアアアアア!!!!!!」 アリーナの声は無残にも聖剣の爆音にかき消され、その一撃は〈ラグナロク〉が霞んでしまうほどの莫大な奔流となって驀進した。 その結果、本来ならば一歩一歩突破しなければならない異界道の結界を終点まで切り裂いた。 その勢いはとどまることを知らず、守護の対象の世界の門の錠前。本来なら向こうの世界より開けられるはずの結界すら消し飛ばしてしまったのだ。 そのことをチヒロはまだ知らない。 いや、知っていてもやっただろう。なぜなら、今の彼は最高にテンションが上がっているのだ。 並みの事では止まることは無い。
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