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「よっと」
大樹の傍らに沿ってゆっくりと降下すると、そこは薄暗い不気味な森だった。
降り立った足元は小高い丘のようで、妙にざらざらとした感触が足をくすぐる。
あたりを見下ろすと、見たこともない植物に謎の物体。さらに謎の動物達があちこちに見て取れた。
まさに異世界そのものだった。
と、チヒロは今の自分の格好を確認してみる。
事故で死んだのだから凄惨になっていると思いきや、いつも履いてるジーンズにTシャツとパーカー。我ながら随分ラフな格好である。
唯一気になったのが足元。靴を履いていなかったことだ。
「幽霊だったから足がなかったのか・・・?」
気にも留めていなかったので思い出すこともできない。
と、チヒロは不意に視線を感じて辺りを見回した。
すると、丘から見下ろせる場所からやや離れた木の近く。
そこに何かがこちらをじっと見ているのがわかった。
目を凝らすとそれは・・・
「女の子・・・?」
まだ幼い面影の少女がそこに佇んでいた。
身長は140センチくらいだろうか。華奢な体つきで腰までストレートに伸ばした髪は醒めるような銀色。
無感情ながらも大きめの瞳は左右で赤と青のオッドアイ。肌は雪のように白く、少女が身に纏う白のワンピースがとてもよく似合っていた。
少女は裸足のままこちらをジッと見上げていた。
その赤と青の美しい瞳に見とれていると、不意に大地が揺れ始めた。
「うわっ、とと!」
聖剣を杖代わりに体を安定させようとする。
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