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義父は取り出した手紙を、静かに読み始めた。
『 前略 親父お袋様
明日僕はこの家を出ます。
ひとり息子の僕が婿養子に出る事、納得した上ではない事は承知しています。
それでも許してくれた事を感謝しています。
僕は今まで、《此処にいてはいけない人間、この家族を苦しめている元凶》そう思っていました。
本音を言えばまだ、そう考えています。
体が弱くて、病院にかかる事が多く、経済的に苦しい思いをさせてしまったのも、妹達に寂しい思いをさせていたのも、全て僕のせいなのだと責め続けていました。
だから親孝行の一つも出来ない僕は、この家を離れます。
ただ、名字が変わろうとも、互いに違う墓に入ろうとも、僕は親父とお袋の子です。
誰の記憶からも消えたとしても親子です。
子を取られた上げた、などと考えたりしないで下さい。
千夏は少々ワガママではありますが、心根は優しく僕を大切にしてくれます。
そして何より、僕が千夏を大切に思っています。
だから心配しないで下さい。僕たちは努力し、本物の夫婦になりますから。
では、これからは互いの幸せを遠く雲の彼方より祈りましょう。 剛人より
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