-すれ違った想い-

23/27
前へ
/92ページ
次へ
手紙を読み終わると、義父はその紙切れを私に手渡し、こう言った。 『昨日は謝ったけど、今日は礼を言う。《千夏さん》、短い間じゃったがありがとう。 アイツは幸せじゃった…』 義父は目に涙を溜め、短い言葉を子等にかけると家路に着いた。 私は、片づけの際見つけたお父ちゃんの《らくがき帳》と一緒に、紙切れのような手紙を小箱にしまった。 らくがき帳には、語られる事のなかったアナタの思いが綴ってあったからだ。 西の空が、茜にそまり始める頃まで、私達は言葉もなく、アナタの思いに思いを馳せていた。  
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加