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ゆっくりと瞼を開け、一番最初に見えたもの。
それは、明らかに自分の部屋のものではない天井。
微妙な染みがあり、人の顔のように見えるものだから少々怖い。
どうやら自分は布団の上に寝かされているようだ。
身体を起こさず目線だけを動かすと、ここが和室であることがわかる。
…トラックに撥ねられたのに和室?病院じゃないのか?
頭を触ると布が巻かれていた。頭だけではなく、左腕にも巻かれている。
左腕を動かすと少々……、いや結構痛い。
そして、何故か湿っているジャージ。
ここは一体どこなのか?あの後、どうなったのか?
ひとしきり考えていると、部屋に近付いてくる気配を感じた。
耳を澄ませば、話し声も聞こえてくる。
「しんぱっちゃんが拾ってきたのは、もう目を覚ましたの?」
「拾ってきたって…、犬・猫じゃあるまいし。」
「だって~、あんなずぶ濡れで砂やら血やらついてたの見たら、その表現が一番しっくりくるじゃん。」
「…………。」
ずぶ濡れ…、血…。
自分に巻かれている包帯と、濡れたジャージを見る。
どうやら話題となっているのは、私の事のようだ。
話し声はどんどんと近付き、部屋の前で止まった。
そして声をかけられる事なく障子が開けられた。
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