出会い

11/16
前へ
/30ページ
次へ
またもや考え事に没頭してしまい、周りの状況を忘れてしまっていたようだ。 顔を上げると、副長が眉間の皺を数本増やし、苛々しながらこちらを睨んでいる。 「すいません。これからの事を色々と考え込んでしまいました。」 とりあえず、素直に謝ってみる。 「これからの事? そもそもお前はどこから来た。何故あんな所で倒れてたんだ。」 矢継ぎ早に質問がとんでくる。 どう答えたらいいのか。 タイムスリップをしてしまい約150年先の未来から来たと答えても、きっと信じられはしないだろう。 更に怪しまれ、問答無用で斬られそうだ。 それにこの人達が信用出来のるか…。 現代で新撰組は有名だが、実際にどんな人達なのかは自分で確認してみないとわからない。 信用出来ない人達に詳しい事を話すのは、身を滅ぼしそうだ。 しかし、何も答えずに運よくここを出れたからといって、生活の基盤を立てる事が出来るのか…。 この時代の生活も、働き方も、お金の事もわからない私が。 なんとかなる、と楽観的に考えない方がいい。 ここは平成とは違い、決して安全な時代ではないのだから…。 「私は京都から来ました。何故川に倒れていたか…と言われても、足を踏み外して落ちてしまい、流されてしまったみたいです。」 「……その着物についてはどう説明するつもりだ。」 「村に来た旅人から譲り受けました。案外着心地がいいんで、気に入ってるんです。」 「………………。」 副長は黙ってこちらを睨む。 今の話を信じてはいないのだろう。 まぁ、当たり前か…。 すると、それまで成り行きを見守っていた永倉さんが話しかけてきた。 「お前はこれからどうするんだ?家に帰るのか?」 .
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加