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またもや考え事に没頭してしまい、周りの状況を忘れてしまっていたようだ。
顔を上げると、副長が眉間の皺を数本増やし、苛々しながらこちらを睨んでいる。
「すいません。これからの事を色々と考え込んでしまいました。」
とりあえず、素直に謝ってみる。
「これからの事?
そもそもお前はどこから来た。何故あんな所で倒れてたんだ。」
矢継ぎ早に質問がとんでくる。
どう答えたらいいのか。
タイムスリップをしてしまい約150年先の未来から来たと答えても、きっと信じられはしないだろう。
更に怪しまれ、問答無用で斬られそうだ。
それにこの人達が信用出来のるか…。
現代で新撰組は有名だが、実際にどんな人達なのかは自分で確認してみないとわからない。
信用出来ない人達に詳しい事を話すのは、身を滅ぼしそうだ。
しかし、何も答えずに運よくここを出れたからといって、生活の基盤を立てる事が出来るのか…。
この時代の生活も、働き方も、お金の事もわからない私が。
なんとかなる、と楽観的に考えない方がいい。
ここは平成とは違い、決して安全な時代ではないのだから…。
「私は京都から来ました。何故川に倒れていたか…と言われても、足を踏み外して落ちてしまい、流されてしまったみたいです。」
「……その着物についてはどう説明するつもりだ。」
「村に来た旅人から譲り受けました。案外着心地がいいんで、気に入ってるんです。」
「………………。」
副長は黙ってこちらを睨む。
今の話を信じてはいないのだろう。
まぁ、当たり前か…。
すると、それまで成り行きを見守っていた永倉さんが話しかけてきた。
「お前はこれからどうするんだ?家に帰るのか?」
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