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「いや…、なんでもない。麻奈こそどうした?待っててくれたのか?」
汗ばんだ顔を拭い、鞄に荷物を詰めつつ問う。
「待ってたというか…、進路希望用紙を先生に出してたの。
それに待ってたところで、雪は体力作りとかでいつも走って帰っちゃうじゃない。
せめて玄関までは一緒に行こうよ。」
麻奈の申し出に了承しつつ、教室の隅っこの死角になる場所で制服から黒のジャージに着替え、二人揃って教室から出て玄関に向かう。
「そういえば先生が、雪も進路希望用紙出してないから出すよう言っとけって言われたんだけど…。雪は高校卒業したらどうするの?
大学?それとも就職?」
「ん…、お金もないし大学に行くつもりはない。就職……かな。」
「そっか、いきたいとこはあるの?体力作りで毎日走ってるし、剣道とか空手も色々してるみたいだけど、スポーツ関係の仕事につきたいの?」
…スポーツ関係か……。
「特にそんなこだわりはないよ。」
「じゃあ、女なのに何でそんなに武術を習う必要があるの?」
麻奈が小首を傾げながら不思議そうに聞いてくる。
私が力をつける理由――。
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