73人が本棚に入れています
本棚に追加
兄に対する母のスパルタ教育の在り方はこうだ。
まず成績や担任からの評価が第一で、兄の気持ちなどそっちのけで、ただただ机に向かう兄にハッパをかけるのだった。
「なんであんたはそんなにできないの?」
「どうしてこんなこともわからないの?」
…教育熱心な母が兄にかける言葉は、時に残酷だった。
勉強が出来るまで、友達との約束を先延ばしにさせて、家に缶詰にして勉強させることさえあった。
兄に引き換え、要領のよかったCrystaは、その、人並み外れた記憶力のみで、授業中に黒板に書いてあったことや、先生が言っていたことを覚えただけで、テストは常にほぼ100点満点だったため、その部分と容姿だけは、母に賞賛された。
しかしながら、母の虚栄心からくる責任転嫁に日々悶々とさせられ、父から時々くる前触れのない暴力は避けられなかった。
小学生から中学生にかけての時分の兄は、内向的なCrystaと比べて、多くの友人に恵まれていた。
中には悪友と呼ばれる類の友人もいて、彼らの存在が幼い時分の兄の、両親からの逃げ場になったのだった。
彼らは、まだ道徳的観念の低い兄に悪知恵を入れて、両親やCrystaのお金を盗ませたり、ペットを凶暴に調教したり、万引きしたり、近所の人達に達の悪い悪戯をしたりして日ごろのストレスを発散するのだった。
まだ幼かったCrystaは、頻繁に悪戯やちょっかいを出してくる兄に反抗して飛び掛かっていき、勝てるはずのない取っ組み合いの大喧嘩に縺れ込むこともあった。
しかしながら、学校でほとんど友人のいないCrystaを気遣って、よく悪友も交えて遊びに誘い出してくれた。最も、兄達のするキャッチボールやプロレスごっこにはひ弱なCrystaはついていきようがなかったのだが…。
最初のコメントを投稿しよう!