02―荒廃した世界―02

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「空凪くん……」 部屋に入ろうとした優也の耳が小さな声を捉える。 横に目をやると、自室から顔色だけをヒョイと出している香穂と目があった。 「何?」 「……なんでもない」 「なんだそれ」 小さくため息をつき、優也は再びドアに手をかけた。 「今日は早く寝な。明日も大変だろうから」 「うん……」 「じゃあな」 香穂の返事を確認し、今度こそとドアをひく。 「空凪くん……」 再び呼び止められる優也。 ドアから手を離し、もう一度横に目をやる。 「また、明日ね」 香穂の笑顔と小さく振られる左手が見えた。 小さな金色の装飾がついたブレスレットが、揺れている。 「――あぁ。また明日」 簡潔にそう返し、優也は右手を振り返す。 その手首には、香穂のものと同じブレスレット。 「……」 扉の向こうへ香穂が消えたのを確認し、優也も自室へ入る。 必要なもの以外は大した物もない、質素な部屋だ。 唯一金をかけたのは、寝心地抜群のフカフカベッドのみ。 そこに身を投げたい衝動に駆られるが、断念。 今の状態でダイブすれば、身に着けた衣類の汚れがこびりついてしまう。 (毎日毎日……服が何着あっても足りやしねー) 心の中で愚痴を零し、風呂場へ直行。 クリーニング行きの服の山を見てうんざりする。 山と言っても、別に優也が怠け者な訳ではない。 『任務、帰還、血だらけでウロウロは無理、着替え、任務』を繰り返していたら一日でそうなるのだ。
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