02―荒廃した世界―02

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「竹下さんも大変だよな……」 支部内のクリーニング営業を一手に引き受ける超巨大クリーニング店『竹下サイクロン』の店長である竹下さんの苦労に思いを馳せながら服を脱ぐ。 そして何気なく洗面所の鏡に目をやる。 右手のブレスレットの金の装飾が微かに光った。 香穂のものと何一つ違う所の無いこのブレスレットを、新人類として目覚めて以来優也は一度も外した事がない。 ペアルックなのだから、当然周りは優也と香穂の恋仲をはやしたてた。 しかしそれは、優也にとっても香穂にとっても反応に困るものだった。 何故なら… 「知らねーもんな……二人共」 …そう。 二人共記憶がないのだ。 というか、新人類全員が、新人類になる前の記憶はない。 彼らが新人類として瞳を開けた時。 彼らには、新人類として人類を守るという使命のみが与えられている。 「……くそったれ」 優也達は以前の自分の事を何も知らない。 そしてこれからも、知る事はないだろう。 仮に優也と香穂が過去に恋仲にあったとしても。 過去を知る手段など、ないのだから。 「藤宮……香穂……」 名前を口にしても何も解らない。 ただ空しさが募るだけ。 そして明日からも、日々は続いて行く。 散るまで守り続ける日々が。 自分の存在すらも、朧気なまま……
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