03―東京第一支部―03

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アベンジャーは、言うなれば人類の最後の砦だ。 オメガに対抗しうる手段を持つ唯一の機関なのだからそれは至極当然の事と言える。 そして当然、一番安全な場所だ。 故に支部には、新人類の他に、オメガの難を逃れた一般人が大量に収容されている。 さらには人々が生活を営むのに必要な設備諸々も。 つまりは、一つの地下都市のようなものなのだ。 生き残った人間達は、ここに生き、いつしか地上に帰る事を夢見て日々を過ごしている。 そんな東京第一支部にて、再び一日が始まる。 「……眠……」 ベッドから半身を起こした状態で、優也は大きな欠伸をした。 午前6時。 いつも通り日の光のない、爽やかとは程遠い朝だ。 一応、天井に備えられたパネルからは、太陽光みたいな温もりを持った光を放たれている。 しかしそんな工夫を施されても結局は地下。 地上の空気とはどこか違う鬱蒼とした雰囲気をはらんでいる事は否めない。 「贅沢言っちゃ駄目だよな……」 優也達は、戦う為とはいえ外に出る事が出来る。 しかし戦う力を持たない人々はどうか。 当然、外に出る事など出来ない。 正確には、しない。 中には外の世界をどうしても目に焼き付けたいという物好きや、最後はお天道様の下で死にたいという人間もいるが…… 口を開けて待っている危険に自ら飛び込むような人間は、基本的に存在しない。 彼等は、もしかすると一生日の光を拝めないかもしれないのだ。 「……はっ」 どっちにしても、この世界に生きる事自体が不幸なのだ。 と、優也はちょっとした感慨を鼻で笑う。 そして準備を終え、外へ。 いつも通りの戦いの日々へと繰り出していく。
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