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彼は、彼の棲家である小さいアパートの一室から外へ出てみようともしなかった。大分前に親に反抗してグレてみるも、グレ方を間違えたのか、アニメの世界に入り浸り、自分の世界へと閉じこもった。
今はもはや、彼にとって永遠の、いや、天国並みの棲家であるアパートの一室は、出入り口が無いかのようだった。
そして、カビ臭かった。
しいて出ていこうと試みるが、アニメの放送時間間近だったため、出ていかず、彼を喜ばせるのには十分だった。
「何が臭いんだか、永遠の謎wwww」
彼は部屋の中を、許されるかぎり広く泳ぎまわってみようとした。
「北島康介ポォウ!!――――――なんかちげえwwww」
人々は思いぞ屈せし場合、部屋の中をしばしばこんなぐあいに歩きまわるものである。けれどオタの棲家は、泳ぎまわるべくあまり広くなかった。
彼は2、3度寝返りをうつことが出来ただけである。
その結果、山済みにされた漫画が崩れてきた。
彼は深い嘆息をもらしたが、あたかも一つの決心がついたかのごとくつぶやいた。
「明日新刊の発売日wwww。金がねwwww」
しかし、彼になにひとつとして金の宛がある道理はなかったのである。
「あ、ママン?新刊出るから買って来てwwww」
いや、おい。
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