綾ちゃんの秘密。

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「リョウ、どこがわからないんだ?」 翔平は綾のノートを覗き込んだ。 「んと…全部かな?」 テヘッと笑う綾をみて、翔平は眉をひそめた。 「おまえ、全部写すつもりじゃないだろうな」 綾はギクッとした。 成績優秀の翔平と大陽に頼み込んで、一気に春休みの宿題を片付けようと企んでいたからだ。 「最初から人を頼るな」 ペシッと叩かれ、綾は口を尖らせた。 (翔平のケチ) 綾はふてくされつつも、机にかじりついた。 その姿をみて翔平は笑いを堪えながら、自身の宿題をはじめた。 ―――― (わからない) 綾は頭を抱えた。 もともと数学は嫌いで授業も大概寝ていた。 チロッと翔平を見るが、彼は宿題を終え小説を読んでいた。 本の表紙には「伊坂幸太郎」の文字。タイトルは「終末のフール」。 「翔平、それ俺読んでない!」 翔平は文庫から目を離し、ふっと笑った。 「ああ、昨日買ったんだ。今回は短篇がつまっていて、どの作品もおもしろいぞ」 綾と翔平は共通の趣味がある。 それは読書だ。二人は漫画でも小説でも、おもしろいと思ったのは共有する。 それは小さな頃からのルールだった。
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