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「あ…やべっ」
綾はふらーっと倒れるように気を失った。
「江崎、おい江崎!しっかりしろ」
翔平は焦った。綾が自分に抱きつく形で倒れてきたからだ。
「しょー…へ…」
「え?」
聞き返したが、何も反応がない。
翔平は綾を抱き上げ、保健室へと走った。
――――
「ポーカーフェイスのキミが、血相を変えてくるなんてくるなんてね」
保険医はニヤリと笑った。
「ただの貧血だから、安心しな」
口に煙草をくわえる。
翔平は呆れて物が言えなかった。
「ほら、愛しの江崎にカバンでも持ってきてやんなよ」
翔平は頷き、図書室へと向かった。
クラスメイトに事情を話し、カバンと読みかけの文庫を受け取った。
「これ…」
翔平は驚いた。
文庫は、「グラスホッパー」で。
挟み込まれているのは、翔平が綾にプレゼントした犬の形のしおり。
(なんで、アイツがもってるんだ)
そして、奥田英朗。
翔平は頭の中がぐちゃぐちゃになった。
(とりあえず、アイツに聞いてみるか)
翔平は早歩きで、保健室へと向かった。
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