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「おわったーー!!」
大きく伸びをしている綾をみて、翔平は文庫を閉じた。
窓を見ると辺りは薄暗くなっていた。
「ほらよ、ご褒美」
「翔平、ありがとう!すぐ読むから!」
文庫には金属製のしおりが挟まっていた。
「リョウはよく本を折るからな」
綾はしおりが犬の形になっていることに気付き、ニカッと笑った。
「俺のために買ってきたんだ?サンキュッ!」
翔平はククッと笑った。綾の素直な反応が思った通りだったからだ。
「じゃ、俺、夕飯の準備しなきゃいけないから帰るね」
「ああ、また明日な」
軽く手をあげ、綾は階段をタンタンと下りていった。
――――
綾は社会人の兄、隆一郎と二人暮しだった。
両親は海外出張でおらず、自然と綾は家事をやることになっていた。
(今日はめんどいから親子丼でいいかな)
洗濯物を取り込みながら、頭の中で考える。
冷蔵庫の中身を確認して、味噌汁の準備をはじめた。
(喉、渇いたな)
いつものお気に入りのジュースをゴクッと飲み、大根を切っていく。
(後は兄ちゃんが帰ってくるまではフリータイム!)
ソファーに腰を下ろし、翔平に借りた本を開いた。
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