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保健室に戻ると、綾の姿はなかった。 「あれ、すれ違いかねー」 保険医は煙草をこすりながら、笑った。 「いやー、女子高生にもなってあんだけウブな子はじめてだ」 翔平が片眉をあげた。 「何したんですか」 「いや、女の子の秘密だからいえないな」 翔平は溜息を吐くのを我慢して、保健室をでた。 教室に戻るが、綾の姿はなく下駄箱をみると上履きが入っていた。 (アイツ、カバン置いて帰ったのか!?) 翔平は慌てて、ローファーに履きかえると― 「翔平、今日は生徒会は?」 大陽がカバンを肩にかけて、声をかけてきた。 「ないなら、一緒に帰ろうぜ」 「悪い。今、余裕がないから」 そう言って、翔平は走った。 「なんだ、あいつ」 大陽はあんなに焦っている翔平をみるのは久しぶりだった。 「もう帰ってるな」 綾の下駄箱をみて、溜息を吐いた。 「仕返しするんだよな、俺…」 綾の一つ一つの反応に、一喜一憂する自分がいる。 大陽はそれが、特別な感情だということに気付いていなかった。 「俺も、帰ろ」 誰もいなくなった下駄箱はやけに静かだった。
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