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綾は家に着いて、頭を抱えた。
「また明日な、リョウ」
そう言って、翔平は去っていった。
普段めったに見せない笑みを浮かべて。
(あ~、どうしよー)
とりあえず、すべきことから片付けよう。
綾は隆一郎に電話をかけた。
「兄ちゃん…悪いんだけど…生理用ナプキン買ってきて…腹がマジ痛くて…」
電話を切ると、綾はソファーに身を投げた。
(女の子って毎月こんなつらい思いしてるのか)
雛子の顔が浮かんだ。
(男に戻ったら、生理の時は気を遣える奴になろう)
綾は目をつぶった。
思い浮べたのは、翔平の笑顔。
(兄ちゃんにはばれるなって言われたよな…)
――――
「綾、平気か?」
隆一郎のやさしい声。
綾はいつのまにか眠っていたことに気付いた。
「痛み止めも買ってきたぞ」
紙袋に包まれているナプキンをみて、綾は申し訳なくなった。
「兄ちゃん、ごめん。恥ずかしかったよね」
「ま、少しな。後、弁当買ってきたから食おう」
綾は頷いた。
(兄ちゃんは、本当に気が利くよな…)
弁当を開けると―
「赤飯…」
隆一郎はニヤニヤ笑っていた。
「綾が女の子になったからな」
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