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「いってきまーす!」
あくる朝。綾は痛み止めを飲み、少し気だるさを感じつつも玄関を飛び出した。
「リョウ、おはよう」
いつもはやめに家を出る翔平が、目の前にいた。
「な、なんでいるの…」
綾は困った。
「昨日、メールがこなかったから」
「わ、私、明治くんのメアド知らないしっ」
綾は、“あや”として振る舞った。
だが、翔平はニヤリと笑う。
「これはなんだ?」
「グラスホッパー」と、金属のしおり。
「そ、それは、リョウに借りたの…」
「へぇ…」
翔平は唇を細長い指で一撫でした後、ククッと笑った。
「江崎、リョウってアメリカにいるのか?」
綾はほっとして、頷く。
その顔をみて、翔平は笑いたくて仕方なくなった。
「おかしいな。リョウからメールがくる時間はあっちだと夜中か明け方だ」
ドキッ
綾の心臓が飛び跳ねた。
「あっちで、伊坂幸太郎が簡単に手に入るとは思えないし」
ドキドキッ
綾は表情を作ることができなくなった。
「な、不思議だよな。江崎?」
翔平は綾の百面相に笑いを堪えた。
「さ、行くか。遅刻するぞ」
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