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大陽はバスケ部の朝練後、妙な噂を聞いた。 「副会長が女の子をお姫様抱っこして廊下を走ったんだって」 マネージャーがきゃぴきゃぴと騒いでいる。 (翔平が?) 色恋沙汰に興味がない幼なじみが、そのような噂になることはめったになかった。 (いつのまにそんな子作ってるんだよ) 大陽はにやけが止まらなかった。翔平のはじめてのスキャンダル。胸が踊った。 「その女の子って誰?」 大陽がにこやかに言うと、マネージャー達は顔を赤らめて答えた。 「転校生の子だって聞いたよ」 「あー、あのかわいいって評判の子ね!」 「確かに副会長も恋に落ちちゃうわ~」 マネージャー達の言葉が、どんどん耳に入ってくる。 大陽ははっと息を飲んだ。 (え、綾ちゃんのこと?) 大陽はいても立ってもいられなくなり、教室に早歩きで向かった。 ガラッ (いない…) いつも早めにくる翔平の姿はない。 (綾ちゃんも…) 大陽は息の乱れを落ち着かせながら、自分の席に着いた。 「おはよう、森永」 「はよ…」 「どうしたの、元気ないよ?」 クラスメイト達が話し掛けてくるが、うまく対応ができなかった。
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