綾ちゃんの秘密。

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一ページ、一ページ。 めくるたびにドキドキする。 伊坂幸太郎は先が読めないからおもしろい、と綾は思った。 (明日、翔平と批評大会だ) にんまり笑いながら、綾は読書に集中した。 ―グラリ 好きな作家の本を読んでいるのにも関わらず、急に眠気が襲ってきた。 (な、なんで?こんなにおもしろいのに) つまらない本は眠気を誘う。その感覚が綾を襲った。 (慣れない勉強したからかな…) 綾は隆一郎が帰ってくるまで一眠りすることにした。 ―――― 「ただいま」 綾は隆一郎の声に目が覚めた。 「おかえりー!」 やけに高い声が自分の口から発した。 まるで声変わりする前のような、声。 (風邪引いたかな) ソファーから上体を起こし、綾は玄関に向かった。 「兄ちゃん、今日は親子丼だよ」 にっこり笑う綾に、隆一郎は驚いた表情を浮かべた。 「親子丼、いや?」 綾の問いに答えず隆一郎は急いで、彼を鏡の前に連れていった。 「!」 綾は言葉を失った。 鏡の前には兄と… 可愛らしい女の子がいたからだ。 「ええーっ!?」 綾が頬をつねると、目の前の女の子も頬をつねっていた。
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