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「に、兄ちゃん、まさか…」
隆一郎は製薬会社に勤めており、家でも研究をしていた。
「悪い…」
隆一郎は空になっているジュースパックを横目に、頭を下げた。
「それ、本当は背が高くなる薬だったんだ」
綾は唾を飲み込んだ。兄は日頃自分が身長の低さに悩んでいるのを見かねて、研究をしていたことがわかったからだ。
(そんな…兄ちゃんを責められないよ)
「と、とりあえず、飯食おうよ。腹が減っては戦はできぬ、だし」
綾はエプロンをつけて親子丼の準備をはじめた。
隆一郎は綾の可愛らしさに目を奪われつつも、スーツを脱ぎに行った。
――――
「どうしよう」
隆一郎と綾は頭を抱えた。
偶然の産物で生まれた薬はすでに残っていない。
また、女の子になる薬はできたとしても男の子になる薬を作れるかはまた別問題だった。
「…とりあえず、母さんに相談するか」
「そうだね」
海外にいる母に事の顛末を話すと、驚くような事を口にした。
「女の子として、とりあえず生活しなさい、だって」
隆一郎の言葉に、綾はクラクラした。
「学校には母さんから伝えるらしい」
隆一郎も口が引きつっていた。
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