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「よし、状況を整理しよう。とりあえずユーは石神桜さんに嫌われている。理由は例の事故のときに黙って見ていたから…オーケー?」
「…オーケー」
「じゃあ、こう考えようじゃないか。黙って見ていたから嫌われている、じゃなくて、黙って見ていたからどういう人間に思われているか、を」
…おぉ!なるほど!
そう考えればいいのか!
「ようするに…それを突き止めて、そういう人間じゃないことを行動で示せ、ということか?」
俺の質問に祐二はまるで「ドヤァ」と言いたそうな微笑を浮かべた。
確かにそうかも知れない。
多分、石神さんは俺のことを「女の子も助けない薄情な人間」って思っているのだろう。
それか、ただのビビリだ。
なら、祐二の言うように行動で示せばいいじゃないか。
俺はビビリだけど、前者のような人間じゃない。
きっと、石神さんもわかってくれるはずだ。
でも…
「なぁ、祐二?」
「ん?どうした迷える子羊」
「石神さんにそれを見せる機会、なくね?」
そう、俺が思ったのはすごく単純なことだった。
火のないところに煙はたたず、そう、俺は今まさにそんな状況じゃないのかな?って思った。
ところが、祐二は怪しげな笑みを浮かべている。
「チッチッチ、祐二くん。7限目の体育の時間は何かな?」
7限目の体育…?
えっと…体育祭はまだ先だし…集団行動は終わったし…
「わからないのかい?今日の体育は、クラス対抗のドッジボールだ」
…!
そうだ!思い出した!
今日は男女混合のチームをつくって、クラス対抗でドッジボール大会があるんだ!
「ってことはそこでなんとか…」
「…いいところ見せようぜ、陽平!」
祐二はニカッと笑った。
俺も一つだけ、この先への不安が消えた気がした。
風がいたずらに吹き、パンが入っていたビニール製の袋が舞った屋上。
さんさんと降り注ぐ陽射しが、まさに始まりを告げていた。
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