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彼女なんて、考えたこともなかった。
生まれてこの方、彼女なんて出来たこともなかった。
居ればいいな、なんて思ったことはあったけど、好きな人すらいなかった。
まぁ好きな人がいたところで付き合うのは無理だろうけどね、俺のステータス的に。
「はぁ…」
俺はため息をついて足下の石を蹴飛ばした。
石はアスファルトを跳ね、そして止まる。
それがなんだか虚しかった。
「…祐二が羨ましいな」
ふと俺は呟いた。
きっと今のが本心なんだろう。
彼女が欲しい。
恋がしたい。
手、繋いでみたい。
きっと今の言葉には、そんな気持ちもこもっていたと思う。
俺は石ころを後目に、大通りに出た。
夕方ということもあり、交通量は多い。
軽自動車、大型トラック、オートバイ
さまざまな機械が道路を入っている。
俺は道路を渡るため、信号が青になるのを待っていた。
こんなに多くの車がスピードを出して走っているのに、何で事故が勃発しないのか不思議になる。
「…俺、免許取れるのかな……って、今日はなんかネガティブになってるような…」
そんなことを呟いていた、その時だった。
「危ない!」
男の人の声が聞こえた。
俯いていた顔を上げると、少し遠い所から車が迫ってきている。
ハンドリングを誤ったのだろうか、少しスピンしていてコントロールが効かなくなっている様子だ。
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