始まりの日

5/7
前へ
/41ページ
次へ
彼女なんて、考えたこともなかった。 生まれてこの方、彼女なんて出来たこともなかった。 居ればいいな、なんて思ったことはあったけど、好きな人すらいなかった。 まぁ好きな人がいたところで付き合うのは無理だろうけどね、俺のステータス的に。 「はぁ…」 俺はため息をついて足下の石を蹴飛ばした。 石はアスファルトを跳ね、そして止まる。 それがなんだか虚しかった。 「…祐二が羨ましいな」 ふと俺は呟いた。 きっと今のが本心なんだろう。 彼女が欲しい。 恋がしたい。 手、繋いでみたい。 きっと今の言葉には、そんな気持ちもこもっていたと思う。 俺は石ころを後目に、大通りに出た。 夕方ということもあり、交通量は多い。 軽自動車、大型トラック、オートバイ さまざまな機械が道路を入っている。 俺は道路を渡るため、信号が青になるのを待っていた。 こんなに多くの車がスピードを出して走っているのに、何で事故が勃発しないのか不思議になる。 「…俺、免許取れるのかな……って、今日はなんかネガティブになってるような…」 そんなことを呟いていた、その時だった。 「危ない!」 男の人の声が聞こえた。 俯いていた顔を上げると、少し遠い所から車が迫ってきている。 ハンドリングを誤ったのだろうか、少しスピンしていてコントロールが効かなくなっている様子だ。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加