24人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし車は俺の方に向かってきているのではなく、かなり右方向にそれている。
「ふぅ…」
と息を吐き、俺は車が向かう先を見た。
ガードレールがしっかりと備わっているため、運転手は軽傷で済むだろう。
が、しかし
そのガードレールの先を見た俺は絶句した。
「ウウ、ヒック…」
「なっ…!」
ガードレールの横には、保育園に通うくらいの大きさの女の子が泣いていた。
きっと恐怖で動けないのだろう。
―――助けなきゃ!もしもあの子に何かあったら…
俺の心はとっさにそう想った。
が、思っただけ。
脳はそれをするための命令を出さなかった。
いや、出せなかった。
やることはわかっているのに、恐怖に体が制されているため動かない。
「うわぁぁん!」
大声で泣き出す女の子。
何もできない自分。
―――くっそぉ……!
そう唇を噛みしめたときだった。
「えっ?」
少し甘い匂いを残し、横を走り抜けた少女。
同じ制服を来て、オレンジ色の髪を夕焼け色に染めている。
向かう先は泣く女の子のもと。
最初のコメントを投稿しよう!