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春。
桜が綺麗だ。
僕は高校2年生となり、結構大事な時期を迎えている。
因みに今は学校へ登校中。
いつもの変わりない道を、ダラダラとくだらない思考をしながら歩いてる最中だ。
「トーイ!!」
僕を呼ぶ声に立ち止まる。
トーイというのは僕のあだ名な訳で、僕の本当の名前は千川 トオイという。
とても分かりやすいあだ名だ。
因みに僕をあだ名で呼ぶのは友達ではなく僕の妹で、生意気にも僕を呼びすてる。
走って駆け寄って来る妹はご近所で評判の美少女というやつで、長く伸ばした黒髪を風になびかせながらやって来た。
確か今年で中2。
「中3!!だから、呟くなっての!!トーイはそれと無表情さえ無きゃ、美少年で通るんだから」
……知らない内に呟いていたらしい。
何だか気まずくなって、再び僕は歩き出す。
それに付いて来る妹。
「まぁ、良いけどね。トーイのいいとこ知ってるのは私くらいのもんだし」
得意気な表情。
何だそれは。妹は僕のことが好きなのか?
とんだブラコンだ。しかし、僕はシスコンではない。
つまり、僕は妹に好かれても嬉しくはない。
だからといって、他人に好かれても嬉しくはない。
そう思う僕は枯れているのだろうか?それとも枯れかけているのか、枯れ果てているのか……。
「全部なんじゃない?」
「……そうか」
どうやら僕はまた呟いていたらしい。一体どこから―――
「だからといって、から」
「…そうか」
全く、この呟き病というのは面倒で仕方ない。
思っていることが、だだ漏れだ。プライバシーの侵害も良いところだと思う。
しかも自覚なく呟いたりするからたまったもんじゃない。
おかげで人には遠巻きにされ、友人と呼べる者はひとりもいないではないか。
「ま、悪い虫がつかなくて良いけどね」
「?何か言ったか?」
「何も」
思考していた僕は、妹の呟きを聞き逃してしまう。
世の中、不公平だ。僕の思考はだだ漏れなのに、妹は僕に隠し事など容易なのだから。
「ま、トーイ。世の中ってそんなもんよ」
……今日も僕の呟き病は絶好調らしかった。
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