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「透理も、もう十八とな。いやはや、時とは早いものだ」
シュンゲンは汁物が入ったお椀を口元で止め、ぽつりと呟いた。箸を口にくわえたまま、はたと止まるトウリ。
シュンゲンと向かい合って座るトウリの隣にそれぞれ座るアオイとエンジも、思わず手を止めた。
「アオは確か十九歳だったな。エンとコガはー……透理より一つか二つだったか下だったのう」
「数えで今年十七となります」
シュンゲンの独り言とも質問とも取れる呟きにエンジは律儀に答える。それを聞き、シュンゲンは御椀を口に付けた。
トウリは箸を置き、湯呑み茶碗を口に付けてぐっと茶を飲み干す。
それを見計らい、アオイは脇に置いてあった盆の上の急須(きゅうす)を上品に持ち、トウリの湯呑み茶碗に新たな茶を注いだ。
水音がやけに響く。
シュンゲンはことりと御椀を机に置いた。
「その歳となれば、都では十分な大人だのう。先日、文を届けに来たのは見るからに童(わらべ)だったぞ。聞けば、まだ十と三年だそうだ。働き者で感心感心」
シュンゲンはにこにこと笑って着物の袖同士を合わせる。
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