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しかし、六人全員が真っ赤な血をどこかしらに浴びていた。
黒い髪の男三人はかすり傷程度とは言え、生々しい血を今も滴らせている。
ミナトは飛び上がって挨拶も忘れ、家へと招き入れた。
子供三人は黙り込んだまま何も喋らない。
『我々は桃花の都の者。芳園家に仕えし者なり。ここは春厳殿の家でしょうか?』
『その通りでございます。貴方様方は一体何用でこのような貧相な山奥へ? 都で何があられたのでしょうか?』
『春厳殿、貴方様は元より都の役人だったそうな? 今もなお、名前は轟いております。そこで、折り入って頼みがございます』
桃の花が咲き乱れるこの家に、都の者の声は静かに震えた。
『我が主である芳園 剱黎(けんれい)様と芳園 理圃(りほ)様が──鬼に食われました』
シュンゲンはただただ目を見開くばかり。皇族である芳園家の当主とその妻が“鬼”に食われた。
『ばッ、ばかな……っ! 鬼は桃花の都に封印されていた筈では!』
『先日、屋敷に盗人が入ったようで。その際に、鬼の封印の要となっていた刀を盗人が動かしてしまったのです。それで封印は破れ……』
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