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酷く悔やんでいる男達にシュンゲンとミナトは顔を見合わせた。
『それで、今都は?』
『大いに荒れております。まるで予の末だ。しかし鬼は……──』
都からやってきた男はシュンゲンに全てを事細かに告げた。恐らく、話の内容を理解出来たのはシュンゲンだけ。
そして、男は本来の目的をシュンゲンに申し出た。
『──我々は鬼からこの方を守る為、春厳殿の元に逃げて来たのです』
そう言って、男は一人の子供を傍に寄らせた。この中で最も血を浴びているのがこの子供。
まるで桃花のような髪に、全てを見据えるかのような赤い瞳。しかし、その高貴な和服は瞳の色よりも黒々しい赤に染まっていた。
一切喋らない小さな男の子。
状況を理解していないのか、状況を理解し過ぎて我を失っているのか、その子は心ここに在らずだった。
『赤い目……まさか』
『御察し通り、この方は芳園家の末裔。剱黎様と理圃様のたった一人の御子息──透理様にございます』
後ろにいたミナトは咄嗟に跪き、土下座する。シュンゲンはどうしたら良いのか分からず、ただぼんやりとしているトウリを見た。
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