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途端、はたと目が合った。シュンゲンは思わず息を呑む。
『俺は、この者達に殺されるのか?』
初めて耳にしたトウリの声。まだ幼いその声は年に似合わぬ口調で、とんでもない言葉を紡いだ。
シュンゲンは眉をただ歪める。
『違います! この方々は味方ですよ! 鬼ではありません! 御心配なさらずに!』
『……父上も母上も、鬼ではなく人に殺されたのにか?』
だんだんと表情が変わっていく。トウリの赤い瞳からは、遂にぼろぼろと涙が流れ始めた。
他の子供二人も大人にしがみついて怯えている。
『春厳殿。どうかお願いでございます。透理様の育て親になってはくれないでしょうか? 都にいれば、透理様は鬼の餌食となってしまう……!』
『そこの二人の童子(どうじ)は?』
『芳園家に仕える獣士の一族の者です。透理様が家督を継いだ際に、正式な獣士となる予定だった子供。茶色の髪の方の名を申 焔士(しん えんじ)。灰色の髪の方を狛尾 鼓雅(はくび こが)と言います。それぞれ申と戌の一族です』
『なんとっ、獣士とな……!』
シュンゲンの驚きの声でさえ大きく震える二人の獣士の一族の子供。
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