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シュンゲンははっとそれに気付き、落ち着きを取り戻す。
『失礼、つい。何分、久しく聞いた言葉だったもので。それに申と戌とは、鬼門に対峙する獣と言われておるではないか』
『やはり察しが良い。その通りです。芳園家は代々“封鬼師(ふうきし)”の力を受け継いでおります。その側近となり主を守るのがこの申と戌、そして酉の獣士。今は酉はいませぬが』
『……ふむ。それで、その子らを儂らに匿えとな?』
『左様。当初、透理様だけをお願いしようと思いましたが、やはりまだ一回りのこの御年。御友人も無しは御辛いでしょうから』
『酉の獣士はおりませんのか?』
『いえ、おりますが……今回同伴させなかったのは酉に一の側近を任せようと思ったからです。酉は賢い。それでいて戦闘能力も長けております。なので、今は高い教養をさせているのです』
『では、いずれ酉も?』
『御連れしたく思っております。春厳様、御頼み御受けしてくれますでしょうか?』
懇願してくる男にシュンゲンは深く深く息をついた。
『湊や』
不意に声を掛けられ、ミナトは不安そうにシュンゲンを見る。
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