第一ノ巻*その男 桃花の如く

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 シュンゲンは昔に浸り、深く息をついた。 「全く、見事に咲いてくれたもんじゃ」  にんまりと笑えば、シュンゲンの顔のしわが深くなる。トウリは背中をやや倒し、両手を腰脇に付いて支えた。 「ジイは昔っから洒落(しゃれ)が好きだな。良くもそんなほいほいと言葉が出てくるもんだ」  感心しているのか呆れているのか、そこらは良く分からない笑みを浮かべる。その横顔を覗くようにエンジはにっと笑った。 「若はそういうの不得意ですからね。葵にいっつも駄目出し食らってますよね?」 「そうなんだ。こいつも優しいのやら、厳しいのやら。なあ?」  顎を少しだけ上げ、意味深長に横目に隣の女性を見る主。  まつ毛が長く、綺麗な二重瞼。筋の通った鼻と桃色の形良い唇を持つ側近アオイは呆れた表情を向ける。 「そういう事は本人に振らないで下さい。返答に困ります」  「ははっ」と笑うトウリ。すると、シュンゲンは不意にアオイに目を向けた。 「おお、そうだ葵。後で糠味噌(ぬかみそ)の重石選びを手伝ってはくれんか?」  瞬間、表情を固めるアオイ。 .
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