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しかし、それは殺那だった為にトウリとエンジは気付かない。直ぐにアオイはやわらかく笑った。
「承知しました。若、もう御食事はよろしいのですか?」
そう問われ、トウリはほぼ空になった茶碗や皿を見る。
「ん? んー、そうだな、御馳走様。それにしても、バア達帰って来ないな」
ふと思い出したかのようにトウリは眉を少し動かした。
「捜しに行きますか?」
そう尋ねたエンジは眉をやや寄せ、腰をやや浮かせる。トウリも着物の袖を合わせ、腕を組みながら立ち上がった。
「そうだね。取り敢えず、もう少し経っても来なかったら行こうかい」
やや遠目に庭を眺めるトウリを片膝を付きながら見上げるエンジ。
「御供は?」
「いらないと言ったら怒るだろう? なら、お前に頼むよ」
「御意」
トウリはそのままゆっくりと歩いて縁側に出る。しかし、足はそこで止めてふとアオイに目を向けた。
「そうだ、水差しに桃花の付いた枝が差してあるからよ。後で生けといてくれないかい?」
一瞬きょとんとなるアオイ。しかし、直ぐに小さく頷いた。
「御意」
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