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どこを基準として見ているのか。どこを果てと見ているのか。
誰がそれを決めたのかも分からない。
しかし、人々はここを東の国と呼んでいる。
ここは東の国──ジン。またの名を花の都と言う。
「──そんな事はいいですから、早く家に戻りますよ? もうお昼ですから、春厳(しゅんげん)様も湊(みなと)様も待っておられます」
淡い藍色の髪を持つ女の子は、呆れ口調で桃色の髪の男の子に話し掛ける。
男の子は大きく肩まで開き、首を覆うように襟の丈が長い黒の服の上に、赤を基調とした着物を着ているのだが、今は上半身のみを着くずして着物は腰にたるみ集まっている状態。
腰には木刀をさしている。
「おいおい、そんな事って言うなよ。今格好ついていただろう?」
陽気に笑いながら男の子は着物の袖に腕を通す。
そんな彼に対し、女の子は白けた眼差しを送った。
「ええ、そーですね」
「おい、感情がないぞ、感情が」
女の子もまた、緑を基調とした着物と袴をはいている。そして腰には同じく木刀。
「失礼ながら、透理様はその人を食った態度をとるから格好つかないのだと思われますが」
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