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*冒頭
花の甘い薫りが鼻を掠めた。
澄んだ青空を見上げれば、花びらが舞い上がっていく様が目に入る。
「桃花に似合う良い天気じゃねぇか」
青年のその桃色の髪の毛は風にふわりと揺れた。
やや赤みも入るその髪はまるで桃の花のよう。
青年は赤い目を細め、陽光を浴びる。
そんな彼に一人の女性が声を掛けた。
「──透理様、また桃花をお眺めですか?」
女性は風になびくその長い青色の髪を押さえ、黒い瞳で青年を見つめる。
青年は桃の花の如く、やわらかく笑った。
「俺の花をな、見てたんだよ」
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