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その一方でたえこは眉間に深いしわを寄せてまるで小汚い汚物でも見るかのようにイクラのしがみついたその手を打ちはらった。
そして続けざまに言う。
「イクラ! 邪魔だからどっかいってなさい!」
「ハーイ!」
イクラはそう言うと、部屋のおもちゃ箱をひっくりかえして好きなおもちゃを取りだして遊びはじめた。
かたや、部屋のそうじをしているたえこの目の前であるにもかかわらず、イクラは大好きなピカチュウのぬいぐるみを車に見立てて床にこすりつける。
「ブー、ブー、ブー、ブー」
あるいは、たえこがおこなっている拭きそうじをまねているのかもしれない。
「あーっ! あーっ!あーっ! あーっ!あーっ! あーっ!」
イクラが奇声を発しながらピカチュウのぬいぐるみを床にこすりつけているのを見かねたたえこがイクラの頬を平手打ちした。
「うっぜえガキだなぁ……。イクラ! 邪魔だって言ってんでしょうが! そうじの邪魔だからあんたはベランダに立ってなさい!」
たえこに叱責され、そしてなかば強引にイクラはベランダへと連れていかれてしまった。
イクラをベランダに追いやると、たえこはベランダに通じる窓の鍵をしっかりとかけて再びそうじを再開しだした。
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