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ひととおりそうじを済ませたたえこはコーヒーを煎れると、たっぷりのミルクと砂糖をつかったカフェオレを作りそうじの疲れをいやした。
ベランダからイクラが物欲しそうな目でたえこのマグカップを眺めていた。
そうじ後のコーヒータイムを終えたたえこはゆっくりとシャワーを浴びた。
それから、髪をかわかして外出用の服へと着替えるとようやくイクラを閉じこめていたベランダに通じる窓を開放した。
「チャーン!」
すっかり冷たくなったイクラが温かな部屋に飛び込んでくるなりすぐさまたえこの腰へとしがみついた。
たえこがその手を打ちはらう。
「汚ねえ手で触れんじゃねぇよ! おかあさんはちょっと出かけてくるからあんたは留守番をしていなさい! いいわね?」
「ハーイッ!」
イクラはたえこが言う言葉を理解しているのかどうかは疑問だが、たえこが言う言葉には嬉々と反応を示した。
それを認めたたえこは玄関へと歩きだす。
イクラが後へと続く。
たえこはハンドバッグを片手に玄関のノブに手をかけてサンダルをはき、外に出ようとしたその時、イクラが後についてこようとしていることに気がついた。
ピシャン! という痛烈な平手打ちがイクラの頬を打つ。
「わかんねぇガキだなぁ……。おかあさんは出かけると言ってんのよ! あんたは家で留守番をしていなさい! わかったぁ?」
イクラを張りたおしてたえこは眉根をつりあげて叱責をした。
「チャーン!」
それでも母親がどこかにいってしまうことを未然に自覚しているのであろうか、イクラはドアに手をかけたたえこに続こうとする。
「うぜぇんだよガキ!」
たまらなくなったたえこはイクラの腹を蹴り玄関からつきとばす。
ドスン! という音をたててイクラはしりもちをついた。
その瞬間にたえこはドアを閉め、しっかりと鍵をかけて外出をした。
「まったく……じょうだんじゃないわ……、あんなガキ……。手間ばっかかけさせやがって……」
ひとりごちながらたえこは街へと向けて歩き出した。
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