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日中のたえこは主にパチンコをしてすごしていた。
重度の知的障害者であるイクラが家にいたのであってはのんびりと休む時間もない。
そのため日中はイクラを家に閉じこめて、ひとり気休めにパチンコに通いを続けるのが日課だった。
夜になれば、夫であるのりすけが帰宅する。
その前に家に戻り、夕飯の準備に取りかかれば良いだけだ。
パチンコでは大勝も大負けもしないようにできるだけ慎重に打つ台をえらんだ。
とりわけ毎日のように通いつめているたえこだけにどちらかといえば軽微ながら日銭を稼ぐくらいであった。
そんな日は気分も良い。
心なしか、のりすけに差し出す夕飯も奮発してしまう。
昼食はパチンコ店の近くにあるカフェで軽くクロワッサンとコーヒーを取っていたが、パチンコが大当たりをしている最中は当然のように昼食も取らずにパチンコに没頭していた。
もちろん、イクラは昼食など食べさせてもらえなかった。
もっとも、イクラ自身はしはおろか、スプーンすらまともに使うことができずに食事といえば、大抵のものは手掴みで口に運んでいたため、たえこはイクラの食事はエサと決めこんでいて、エサは一日二回と決めていた。
パチンコで負けた日は気分が悪いため、イクラに与えるエサは抜きにしていた。
毎日のエサは朝と夕に支給をする。
のりすけが出勤した後に犬用のプラスチックの皿に牛乳をひたしたパンを入れてイクラに食べさせた。
夕飯はのりすけが帰宅する前にごはんなどをシチューや、みそ汁などでグチャグチャにしたものをエサとして支給をした。
イクラはそれを手掴みで食べ、プラスチックの皿をまるで犬のようにベロベロとなめていた。
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