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そんなある日、たえこは久しくパチンコで大勝をした。
わずか半日で11万もの大金を手にしたのである。
11万といえば、のりすけが稼いでくる給料の3分の1ほどである。
たえこは小躍りするかのように喜んだ。
実に気分が良かった。
そんなこともあってか、帰り際にイクラにやるエサとしてミスタードーナツを購入した。
のりすけと、自分用にはうなぎの蒲焼を夕食用として購入をして家へと帰る。
家に帰宅すれば案の定イクラが部屋中をグシャグシャにしていた。
おもちゃ箱はひっくりかえされ、ありとあらゆるおもちゃが散乱している。
ピカチュウのぬいぐるみは無残にも首がもげており、はらわたならぬ内部のわたがはみ出していた。
電話機もどこかになくなっている始末である。
「チャンッ!」
たえこの帰宅を認めたイクラが呆然と部屋の様子を眺めると、その後たえこの腰にしがみついた。
瞬時にパチンコで大勝した喜びから無性な腹立たちさがたえこを襲う。
スパーン! 強烈なビンタがイクラの頬をとらえる。
「バブーッ!」
「イクラ! 電話機はどこにやったの? このクソガキ自分のおもちゃと家のもんも区別つかんのか?」
「ハーイッ!」
イクラが答える。
が、それはさらにたえこを激昂させるだけであった。
夕飯の食材を冷蔵庫にしまう。
腹の底からあふれ出るいらだちを抑えるためにたえこは熱いコーヒーを煎れ、たっぷりのミルクと砂糖でカフェオレを作った。
本来、イクラのエサとしてやるべくして購入したミスタードーナツを食べる。
「あーっ! あーっ! あーっ! あーっ!」
イクラがそれを欲しがりたえこから取りあげようとする。
食事の邪魔をされたたえこは、さらにいらだちが募り激昂は最高潮へと達する。
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