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「うるせぇんだよ! クソガキがぁ!」
たえこはまとわりつくイクラに対しその腹へむけて蹴りをいれてつきとばした。
ドスン! という音をたててイクラはしりもちをついて散乱するおもちゃの中へと倒れた。
「バブー!」
イクラは泣くということができないので、奇声をあげて悲しみをあらわすしかできない。
「あんたのエサは今日はなしだからね! 電話機を見つけてきなさい! それが見つかんなきゃあんたのエサはなしだよ!」
「バブーッ! バブーッ! バブーッ! バブーッ! バブーッ!」
「やかましいんだよ! クソガキがぁ!」
たえこは声をあらげてイクラを叱責した。
毎日そうだ。
外出して、帰ってくればイクラが部屋中をグシャグシャにしてしまう。
毎朝部屋をそうじしても、外出するたびに部屋の中は台風に遭ったかのようにグシャグシャになってしまう。
うんざりだ。
それでも、のりすけという夫がいるからこそ、たえこはなんとか堪えていけたのだった。
イクラのエサとして購入をしたミスタードーナツを食べ終えてたえこは部屋の後かたづけを始めた。
おもちゃ箱を持って、次から次へと散らかっているおもちゃを放りこんでいく。
イクラはそのうしろをまるでお母さんアヒルのうしろに続くひな鳥かのように続いた。
ようやくおもちゃを全部回収し終わってリビングにおもちゃ箱を置く。
ドサーッ! おもちゃ箱がイクラの手によってひっくりかえされた。
「あーっ! なにすんだこのクソガキ!」
スパン! スパン! スパン! となんども平手打ちをイクラにおみまいした。
「バブーッ!」
イクラは鼻血を垂らしながら、悲哀の情を浮かべているが、たえこの怒りはそれだけにおさまることはなかった。
「クソガキちょっとこい!」
イクラの手をむりやり引いて浴室へと引き連れる。
「あーっ!」
たえこは驚愕たる声をあげた。
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